2012年度(第85回)アカデミー賞外国語映画賞|日本からの出品作が決定 (『かぞくのくに』)

2012年度(第85回)アカデミー賞外国語映画賞部門への日本からの出品作が決まりました。


【参照】 
● 一般社団法人 日本映画製作者連盟
 http://www.eiren.org/academy/exhibition.html


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日本からの出品作 
かぞくのくに
英題:Our Homeland
監督 ヤン・ヨンヒ Yong-hi Yang
出演 安藤サクラ、井浦新、ヤン・イクチュン、
   京野ことみ、大森立嗣、村上淳、省吾、
   諏訪太朗、宮崎美子、津嘉山正種、他
日本配給 スターサンズ
※ 2012年ベルリン国際映画祭 C.I.C.A.E(国際アートシアター連盟)賞受賞作。



● 日本代表作『かぞくのくに』は「外国語映画賞部門の最終選考に進む9作品」に残れず、落選しました。

この手の物語は時と場所こそ違えどすでに散々語られているので、題材に対しての切り口に目新しさは無さそうな本作ではアカデミー賞外国語映画賞のような国際的なコンペティションで勝ち抜くのは厳しかったでしょう。(現に、ベルリン国際映画祭でも大きな賞は受賞していません。国際的なコンペティションで勝ち抜ける程の特色・強みがある作品ならもっと大きな賞を受賞できたはず。) とはいえ、『桐島、部活やめるってよ』『苦役列車』のような青春期のルサンチマンを扱った作品では国際的コンペを勝ち抜くには弱過ぎるし、社会的問題を扱った『終の信託』『希望の国』は国内公開時期が10月なので出品規定に合わないので本年度は出品不可だし(9月末までに国内で劇場公開されていないとダメ)、結局のところ個人的な物語に留まってしまう作品もダメだろうし……。昨年度同様、国際的コンペを勝ち抜くことができそうな日本映画が他に無かったということで、どれを出してもダメだったでしょう。こういう傾向は今後も続いていくことでしょう。

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(シネマトゥデイの作品紹介より)『Dear Pyongyang ディア・ピョンヤン』『愛しきソナ』のヤン・ヨンヒ監督が北朝鮮と日本に暮らす自身の家族の境遇を三たび題材に掲げ、初のフィクション映画として作り上げた家族ドラマ。北­朝鮮に住む兄が病の治療のために25年ぶりに帰国し、思想や価値観の違いに戸惑い、理不尽な政治情勢に振り回される家族の様子を描いていく。日本に住む妹に安藤サクラ、北­朝鮮から一時帰国する兄に井浦新がふんするほか、『息もできない』のヤン・イクチュン、京野ことみなど実力あるキャストが顔をそろえる。



【参考記事】 映画.com 2012年09月15日付け記事
アカデミー賞日本代表「かぞくのくに」、韓国での公開が決定

井浦(井浦新)は「インディペンデントの作品が、王道中の王道であるアカデミー賞の日本代表になると聞いて、時代が変わり始めているのかなと思う。監督はすごいことをしでかしてくれた」と静かに喜びを表していた。


独立系作品が選ばれたのはこれが初めてではありません。つまり、映画製作の現場に居る人間であっても、自分が関わっている作品が実際にアカデミー賞へ出品されてはじめてアカデミー賞外国語映画賞部門というものへ関心を持つようになる、ということですね。それくらい、毎年日本から何が出品されているか/各国からどういう作品内容のものが出品されてきているか/どういうものがノミネートされるか、などに興味を持たれてないということ。

代表に選ばれたから/ノミネートされたから/受賞したから偉いとか立派だとか、受賞するという事自体に価値が有るとか無いとかそういうことではなく、世界的な映画賞は時代を流れを見るのに適しているから日本映画の現場に居る人々はもう少し関心を持ってみたらいいのになあと思います。時代の流れを掴まえるには適しているし最も手っ取り早い方法ではないでしょうかねえ。各国代表作の予告編の数々を見るだけでもかなり潮流は感じられますよ。そうでないと完全に置いていかれると思うのですが。(もうすでに置いていかれているかもしれないけど。潮流から置いていかれてもいいのなら構わないけど。)

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(2015/06/13 追記) この予告編で提示されている以上の物語がほとんど無い、という本編でした。 ― さて、これなら『桐島、部活やめるってよ』か『アウトレイジ ビヨンド』を日本代表作として送ったほうがよかったかも。いずれにしてもこの年、日本代表作品がアカデミー賞外国語映画賞というコンペを勝ち抜くことは難しかったと思いますが、『桐島、部活やめるってよ』や『アウトレイジ ビヨンド』のほうが技術的な部分での安定性はあったのではないかと。ピンボケする部分がある撮影/演者の台詞の音量が大き過ぎたり逆に小さ過ぎたりする一定しない録音/リズムの悪い編集など特に映像面で他国の代表作との比較になったらこれでは勝負にならないと思う。また、「政治体制が原因で2国間で引き裂かれてしまった家族」という題材ですでにさまざまな映画が作られているので、このような展開だけではちょっと厳しい。日本人観客にとっては一撃されるような題材/問題提起であっても、他国の観客にとってはインパクトに欠けるということ。(この作品自体の価値の有無とかそういうことを問題にしているということではなく、他国代表作品と競い合ったときにはこの作品ではかなり厳しい戦いになるのではないか、という意味です。)




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