2013年度(第86回)アカデミー賞外国語映画賞|最終選考に進む9作品(外国語映画賞 ショートリスト) 発表|日本代表作『舟を編む』は落選

映画芸術科学アカデミーは2013年度(第86回)アカデミー賞外国語映画賞の最終選考に進む9作品を発表しました。この9作品は、エントリーされた76作品(1ヶ国につき1作品の出品)の中から選ばれました。


この9作品の中から、最終的なノミネート作品5作品が選ばれます。



● 映画芸術科学アカデミー 公式サイトのプレスリリース (2013年12月19日付け)
  9 Foreign Language Films Advance in Oscar[レジスタードトレードマーク] Race



アカデミー賞外国語映画賞の最終選考に進む9作品のうち6作品は、外国語映画賞部門を担当する委員会の会員による投票によって決まり、残りの3作品は外国語映画賞執行委員会(Foreign-Language Film Award Executive Committee)からの推薦で決まります。外国語映画賞執行委員会はロサンゼルスを活動拠点としているアカデミー会員20名から成り立っています。 (The Wrap のSteve Pond 氏の記事による)

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2013年度アカデミー賞外国語映画賞最終選考に進む9作品

(出品国名のアルファベット順に)


オーバー・ザ・ブルー・スカイ
英題:The Broken Circle Breakdown 
監督 フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン Felix van Groeningen
(ベルギー)




鉄くず拾いの物語
英題:An Episode in the Life of an Iron Picker  
原題:Epizoda u zivotu beraca zeljeza
監督 ダニス・タノヴィッチ Danis Tanovic
(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)




消えた画 クメール・ルージュの真実
英題:The Missing Picture
原題:l'image manquante
監督 リティー・パニュ Rithy Panh
(カンボジア)




偽りなき者
英題:The Hunt  
原題:Jagten
監督 トマス・ヴィンターベア Thomas Vinterberg
(デンマーク)




ふたつの人生(2013年大阪ヨーロッパ映画祭時の邦題)
英題:Two Lives
原題:Zwei Leben
監督 ゲオルグ・マース Georg Maas
(ドイツ)




グランド・マスター
英題:The Grandmasters  
原題:一代宗師
監督 ウォン・カーウァイ Wong Kar-wai
(香港)




悪童日記
英題:The Notebook 
フランス題:Le Grand Cahier
ハンガリー題:A nagy Füzet  
監督 ヤーノシュ・サース János Szász(Janos Szasz)
(ハンガリー)




グレート・ビューティー 追憶のローマ
英題:The Great Beauty
原題:La grande bellezza
監督 パオロ・ソレンティーノ Paolo Sorrentino
(イタリア)




オマール、最後の選択
原題:Omar
監督 ハニ・アブ・アサド Hany Abu-Assad
(パレスチナ)




なお、The Wrap の Steve Pond 氏のこの記事によると、『グランド・マスター』『オーバー・ザ・ブルー・スカイ』『Two Lives』は一般委員からの推薦、『The Missing Picture』は執行委員の選択ではないか、とのこと。

また、12月03日付けの記事(Oscar’s Foreign Language Chair Promises Big Changes After This Year’s Awards)によると、今年度のアカデミー賞終了後には外国語映画賞部門の大幅な見直しがなされるだろうということです。


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最終選考に進む作品として有力視されていたけれど落選した、主な候補


ある過去の行方
英題:The Past  
仏題:Le Passe
監督 アスガー・ファルハディ Asghar Farhadi
(イラン)




グロリアの青春
原題:Gloria
監督 セバスティアン・レリオ Sebastian Lelio
(チリ)



少女は自転車にのって  
英題:Wadjda  
独題:Das Madchen Wadjda
監督 ハイファ・アル=マンスール Haifaa al-Mansour
(サウジアラビア)



The Rocket
監督 キム・モダン Kim Mordaunt
(豪州)



イロイロ ぬくもりの記憶
英題:Ilo Ilo
原題:爸媽不在家
監督 アンソニー・チェン Anthony Chen
(シンガポール)



Gabrielle
監督 ルイーズ・アルシャンボール Louise Archambault
(カナダ)



私の、息子
英題:Child's Pose
原題:Poziția copilului
監督 カリン・ピーター・ネッツァー C?lin Peter Netzer(Calin Peter Netzer)/
(ルーマニア)



エリ(2013東京国際映画祭での邦題)
原題:Heli
監督 アマト・エスカランテ Amat Escalante
(メキシコ)



未熟な犯罪者(2012年東京国際映画祭での邦題)
英題:Juvenile Offender  
原題:Beom-joe-so-nyeon
監督 カン・イグァン Yi-kwan Kang
(韓国)



Bethlehem
原題:Beit-Lehem
監督 ユバール・アドラー Yuval Adler
(イスラエル)



Neighboring Sounds(Neighbouring Sounds)
原題:O Som ao Redor
監督 クレベール・メンドンサ・ フィーリョ Kleber Mendonca Filho
(ブラジル)


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ノミネートが確実視されていた3作品、『ある過去の行方』『グロリアの青春』『少女は自転車にのって』がこの段階で落選するという大波乱。 リスト入りした作品とみると、例年になくアートハウス系作品が多いように思います。 『アデル、ブルーは熱い色』が出品されてこなかった影響か、『アデル、ブルーは熱い色』が無くても見劣りしないようなラインアップになるようにとアート系作品・メジャーな国際映画祭の受賞歴または出品歴のある作品が選ばれたという印象。

同部門のノミネート傾向は『おくりびと』が受賞した後から変化してきました。『おくりびと』が受賞した5年前とはもう違うのです。

今年のように『そして、父になる』『風立ちぬ』という国際的評価も高く知名度のある作品が日本国内に2つもある年などそう無いのにどちらも選出しなかった。他の国から、どういう作品が出品されてきているか/その作風の傾向や変化を全然チェックしていないであろう日本代表選考委員は最高のチャンスをみすみす潰したということです。今の日本は国際的な競争力のある作品を毎年出品できるわけではなく今年は”最大のチャンス年”だったので余計残念です。


ですから、こういう認識↓はいい加減改めたほうがいいでしょう。傾向は刻々と変わっているのに。『おくりびと』なんてもう5年も前のことです。 

日経エンタテインメント!   2013/12/16付け記事
米アカデミー賞 日本代表はなぜ「舟を編む」なのか

※今年の選考委員は7人。映画評論家の品田雄吉氏、脚本家の石森史郎氏、映画祭ディレクターの大竹洋子氏、映画プロデューサーの角谷優氏、映画ジャーナリストの野島孝一氏、撮影監督の高間賢治氏、映画監督の平山秀幸氏が名を連ねる。 応募作は、出品側の要望で非公開だが、今年は15本集まった。例年は25~30本というから、少なめだ。


「昔は映画評論家ばかりだったが、今は監督や脚本家などメンバーは職種別で、各自がプロの視点で映画を見て、自由闊達(かったつ)に意見を出している」とは、代表を務める映画評論家の品田雄吉氏。


今回の「舟を編む」は、この「おくりびと」に類似点が多いという。 「『おくりびと』は、お弔(とむら)いの方法(納棺)が日本独自の文化だったのがよかったのだと思う。一方で、お葬式やエンバーミング(遺体保存)はどの国にもあり、共感ポイントもある。この両面を持ち合わせていたから、アカデミーを獲れたのではないか。『舟を編む』も同様のことが言える。辞書の編さんは万国共通の職業だが、日本というのは特別。字引が世界の入り口となり、日本語で独自の世界が見せられるという作品のあり方が、『おくりびと』に近い」(品田氏) 今回の選考委員の7人中6人が、「おくりびと」のときのメンバー。11年には「告白」がノミネート手前の9本に残るなど、好成績が続いている。 「議論を詰めた後での投票で、全員の合意で決まるわけではない。世間でも、賛否両論があって当然だと思う。ただ、選ばれるのは1本だけ。打算も政治もなく、アカデミーに見せたいと思える日本の作品を選んできたが、近年結果にもつながっている」(同氏)


「好成績が続いている」「近年結果にもつながっている」なんて手前味噌なことを言っていますが、『おくりびと』以降2010年度に「最終選考に残った9作品」に入った(中島哲也監督作『 告白』)だけで全然続いてないではないですか。続いているというのはドイツみたいな国のことを言うんじゃないでしょうかね。 あなたがたの「見せたい日本映画」と「アカデミー賞を他国の映画と競争し合うのに最もふさわしい作品」はちょっと違うということです。アカデミー賞外国語映画賞はコンペ(競争)なんだから。単に「私たちが見せたい日本映画」をご披露して終り、という場所じゃない。




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