2014年度(第87回)アカデミー賞:ルール改定箇所を発表

映画芸術科学アカデミーは理事会にて2014年度(第87回)アカデミー賞に対する規則を承認したと発表しました。発表された改定箇所は以下のとおり。


● 公式サイト内 プレスリリース (2014年06月27日付け)
 Awards Rules Approved For 87th Oscars[レジスタードトレードマーク]


改訂された規則(完全版)は以下(↓)に記載されている通り。
Rules & Eligibility for the Academy Awards


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俳優賞部門

映画会社(スタジオ)と制作会社(プロダクション)は、各作品において審査対象となる俳優を最大で男優10名女優10名に限定しなくてはなりません。そして、その俳優名を記載したものを公式スクリーンクレジット(Official Screen Credits / OSC)として提出しなければなりません。

どの俳優に投票可能であるかが分かるリマインダー・リスト(=アカデミー賞俳優部門の審査対象となっている俳優がチェック出来るリスト)は各作品において男優のリストと女優のリストそれぞれ別々にリストアップされます。

ただし、俳優分科会に所属しているアカデミー会員が自分が投票しようとしている候補者が主演部門へ入るべきなのか助演部門へ入るべきなのかを自分自身で決定するという点では今まで通り変わりがありません。

出来るだけノミネートされやすいようにするためスタジオ側が「この俳優は助演部門でプッシュする」と宣言しても、実際に作品を見てみると「この人はどう考えても主演だよなあ」というケースがあります。(また逆に、その年の有望候補者の顔ぶれを顧慮し助演俳優を主演で推すという場合もあり。) スタジオがカテゴリーを指定してきても、主演と助演のどちらのカテゴリーで投票するかは投票者である俳優分科会所属のアカデミー会員ひとりひとりの判断に委ねられています。




長編アニメーション映画賞部門
同部門へ出品したい場合、出品のための書類にはDVDスクリーナー(試写用のDVD)の提出が必須となります。




長編ドキュメンタリー映画賞部門
同部門の審査対象となるためにはニューヨークとロサンゼルスの両都市において劇場公開しなければなりませんが、その際、最低でも一日に4回は上映しなければなりません。また、正午から午後10時までの時間帯に上映が開始されていなければなりません。そして、少なくとも一日に一回は午後6時から午後10時までの時間帯に上映されなければなりません。

長編ドキュメンタリー映画賞部門はあまりにも出品本数が増えてきちゃって、こうして審査対象になる作品を絞っていかなければ審査し切れない、ということだと思います。(たぶんね)




主題歌賞(歌曲賞)部門
同部門において作詞家/作曲家として審査対象となるのは、(個人に限定されず)グループとしてなりたっているものも可能となります。(=作詞者/作曲者としてクレジット登録するのに、要請があれば個人名でなくグループ名でも登録可能になる。) グループ名として申請された場合、主題歌賞を受賞した時に贈られる受賞像(オスカー像)はそのグループに対して一体のみ、となります。

昨年度、主題歌賞にはU2の楽曲がノミネートされましたが、その際には作詞者として Paul Hewson、作曲者として4名の名がクレジットされました。今後は、今まで通り個人名で申請するのも可能だし、もしグループ名で申請したければそれも可能になるということですね。ただし、グループ名で申請した場合はもし受賞してもオスカー像は一体しかあげないよ(メンバーの人数分オスカー像を贈るということはしないよ)ということですね。




作品賞部門
作品賞の審査対象となる映画のプロデューサーのクレジット数を決める際、少なくとも過去5年間において個人でプロデューサーとしてのパートナーシップを確立していて、少なくとも2つの劇場公開作品にてチームとしてプロデュースをしたことがあるならばその場合は、2名によるプロデューサー・チームを”ひとりのプロデューサー”としてみなすことが出来ます。(これまでは ”最低でも5つの劇場公開作品にてプロデュースをしたことがある” のが条件だったがそれに代わって)

プロデューサーとして名を連ねていても”名だけ”で実質その業務をしていないという人物を排除し、実務をしていない”名だけのプロデューサー”にアカデミー賞の栄誉を与えないように/作品賞にノミネートされる&受賞するプロデューサーが膨大な数にのぼらないようにと、以前にクレジット数を3名に限定するよう改正されたのですが、やがて特別な場合には4名まで登録可能となり、今回、さらに”設定されている条件を満たしている場合には”もっと沢山のプロデューサーを登録出来るようになりました。プロデューサーとして実務をこなしているのに/作品に深く関わり尽力したのにプロデューサーの登録数が3名に限定されているためオスカー像を貰えないという人が出てきてしまっている現状を考慮した、ということでしょう。ただし、”名だけのプロデューサー”を排除できるよう、現役プロデューサーとしてきちんと実務をこなしている人を選出できるようにしてあります。




プロダクション・デザイン賞部門(美術賞)
該当作品が事実上、アニメーションとデジタル技巧で構成されている場合、デザイン部門で主導しているデジタル・アーティストもプロダクション・デザイン賞の審査対象として考慮されるようになります。今まで、同部門へクレジットされるのはプロダクション・デザイナー(production designer)と美術監督(アート・ディレクター / art director)とセット装飾者(セット・デコレーター / set decorator)でした。(そこへ、デジタル・アーティストも加わることが可能となりました。)

デジタル・アーティストが審査対象としてクレジットされるようになると、実写映画だけでなくアニメーション映画からもプロダクション・デザイン賞部門へノミネートされてくるようになるのではないかと期待されています。今現在、規定上はアニメーション映画からも同部門へノミネートは可能なのですが、投票者である同部門のアカデミー会員には「アニメーション映画からもデザイナーを選んでもよいのだ」という意識があまりないようで、ノミネートされてきません。




短編映画賞部門(短編アニメーション映画 / 短編実写映画)
普通の劇場で公開されたわけではないれど一般公開されたり配給されたりした短編映画も「短編映画の審査対象となることが出来る映画祭のリスト(Short Films Qualifying Festival List)」に掲載されている映画祭の勝者となれば(受賞すれば)審査対象となることが可能になります。普通の劇場で公開される前に一般公開されたり配給されたりした短編映画で(指定された)映画祭で受賞していない作品は、以前同様、審査対象から外されます。

今までは「一般劇場で公開される前に何らかの形で公開されてしまった短編映画(例えばTVで放映されたりしてしまったり、とか。)は、いかなる場合でも審査対象にならなかった」ということですね。それが今後は、指定された映画祭で賞を獲っている場合に限っては「一般劇場で公開される前に何らかの形で公開されてしまった短編映画」も審査対象となり得る、ということですね。短編映画が劇場公開されるということは現状では限られてきますし、出来のいい短編映画だからこそTV放映されている率も高いでしょう。映画祭で賞が獲れるような質の高い作品なのに先にTV放映が済んでしまっていることでアカデミー賞に出品不可となるのは勿体ない、できるだけ高品質の短編映画がアカデミー賞へ出品されてきて欲しい、ということでしょうね。特に実写の短編映画はTV放映で公開されることが大半でしょうし、「TV放映され高評価を受けたのに規定に合わないということでアカデミー賞にエントリーできなかった」という悲しいことが起きやすいのかも。そして、そういう悲しいケースを減らそうということでしょう。





学生アカデミー賞に関して
学生アカデミー賞の「オルタナティブ部門(Alternative)」「アニメーション部門(Animation)」「一般実写フィクション部門(Narrative)」「外国語映画部門(Foreign Film)」の4部門における金メダル(金賞)・銀メダル(銀賞)・銅メダル(銅賞)の受賞作品がアカデミー賞短編映画賞(短編アニメーション映画賞 / 短編実写映画賞)の審査対象となることが可能になりました。これは初めての試みです。また、これと同様に、学生アカデミー賞の「ドキュメンタリー部門(Documentary)」の金メダル(金賞)・銀メダル(銀賞)・銅メダル(銅賞)の受賞作品もアカデミー賞短編ドキュメンタリー映画賞の審査対象となることが可能となります。

映画芸術科学アカデミーとして新人の育成にさらに力を入れていこうという試みでもあるし、学生アカデミー賞という存在の認知度/重要度をあげたい、ってことでもあるでしょう。正直、私も学生アカデミー賞というものには殆ど(というか、全く)関心がなかったし。「ヨーロッパとかの大手映画祭だけじゃなく、アメリカのアカデミー賞にも学生向け/映画学校向けの賞があるよ。みんな、こっちにも参加してね。有能な新人さん、お待ちしていま~す♪」って、そういうことかも。


大きな改訂点は以上。あと、その年に応じた日付けの変更や手続き上の改正のような細かい改訂もあるようです。




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