2016年度(第89回)アカデミー賞|アカデミー会員として683名を招聘|仲代達矢、河瀬直美、黒沢清、北野武、是枝裕和、米林宏昌、原一男、種田陽平、赤塚佳仁、西村義明、堤大介、山村浩二、梅林茂など日本人映画人も多数招聘

2016年6月29日付けで、映画芸術科学アカデミーはアカデミー会員として683名の映画関係者を招聘することを発表しました。この招聘を受諾した人が2016年度(第89回)よりアカデミー会員として追加されます。(招聘を受けても本人が招聘を受諾しなければ会員として加わえられません。)


● 公式サイト内 プレスリリース (2016年6月29日付け)
ACADEMY INVITES 683 TO MEMBERSHIP( ttp://www.oscars.org/news/academy-invites-683-membership )



昨年度(=2015年度)に”アカデミー会員になりませんか”と 招聘を受けた人(招聘を受諾した人ではない。)は 322名 でした。本年度(=2016年度)は昨年度の倍以上と、かなり大人数の招聘です。日本人の映画関係者もたくさん招聘されています。なお、ヴァラエティ誌の記事( ttp://variety.com/2016/film/awards/new-oscar-members-cheryl-boone-isaacs-1201806211/ )によると、今回招聘された人々のうち女性は46%、有色人種は41%とのこと。
人種/年齢/性別の偏りが甚だしいと指摘されているのでその是正のためにこのような大量の招聘となった模様。事実上リタイア状態にあるようなアカデミー会員を辞めさせるというわけにはいかないので偏りを是正するとなると新たに大量に招待する、ということになるのでしょう。



● 映画芸術科学アカデミー 公式サイト(トップページ)
 The Academy of Motion Picture Arts and Sciences


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今回、招聘を受けた日本人映画関係者
(なお、代表作は映画芸術科学アカデミーのプレスリリースに掲載されているもの)


なお、名前(英語表記)の後ろにアスターリスク(*)が付いている人は複数の分科会から招聘を受けている人です。複数の分科会から招聘を受けている人は、アカデミー会員への招聘を受諾する際には所属する分科会を選択しひとつに限定しなければなりません。



【俳優】branch|Actors

仲代達矢 Tatsuya Nakadai
代表作|乱 “Ran”
    影武者 “Kagemusha”




【美術(美術デザイン関係)】 branch|Designers

赤塚佳仁 Yoshihito Akatsuka
代表作|ひだりみみ “The Left Ear”
    セデック・バレ 第一部・第二部 “Warriors of the Rainbow: Seediq Bale”



種田陽平 Yohei Taneda
代表作|モンスター・ハント “Monster Hunt”
    ヘイトフル・エイト “The Hateful Eight”




【監督】 branch|Directors

河瀬直美 Naomi Kawase*
代表作|2つ目の窓 “Still the Water”
    殯(もがり)の森 “The Mourning Forest”
※ 河瀬直美さんは脚本家分科会からも招聘を受けていますので、もしこのアカデミー会員としての招聘を受けるとすればご本人がどちらの分科会へ所属するかを決めることになります。



黒沢清 Kiyoshi Kurosawa
代表作|セブンス・コード “Seventh Code”
    回路 “Pulse”




【ドキュメンタリー】 branch|Documentary

原一男 Kazuo Hara
代表作|全身小説家 “A Dedicated Life”
    ゆきゆきて、神軍 “The Emperor’s Naked Army Marches On”




【音楽】branch|Music

梅林茂 Shigeru Umebayashi
代表作|グランド・マスター “The Grandmaster”
    2046 “2046”




【短編および長編アニメーション】 branch|Short Films and Feature Animation

西村義明 Yoshiaki Nishimura
代表作|思い出のマーニー “When Marnie Was There”
    かぐや姫の物語 “The Tale of the Princess Kaguya”



堤大介 Dice Tsutsumi(Daisuke 'Dice' Tsutsumi)
代表作|ダム・キーパー “The Dam Keeper”
    モンスターズ・ユニバーシティ “Monsters University”



山村浩二 Koji Yamamura
代表作|マイブリッジの糸 “Muybridge’s Strings”
    頭山 “Mt. Head”



米林宏昌 Hiromasa Yonebayashi
代表作|思い出のマーニー “When Marnie Was There”
    借りぐらしのアリエッティ “The Secret World of Arrietty”




【脚本家】 branch|Writers

河瀬直美 Naomi Kawase*
代表作|2つ目の窓 “Still the Water”
    火垂(ほたる) “Firefly”
※ 河瀬直美さんは監督分科会からも招聘を受けていますので、もしこのアカデミー会員としての招聘を受けるとすればご本人がどちらの分科会へ所属するかを決めることになります。



北野武 Takeshi Kitano
代表作|アウトレイジ “Outrage”
    菊次郎の夏 “Kikujiro”



是枝裕和 Hirokazu Koreeda
代表作|そして父になる "Like Father, Like Son”
    誰も知らない “Nobody Knows”


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【日系の映画人】

キャリー・ジョージ・フクナガ(監督分科会)
Cary Joji Fukunaga – “Beasts of No Nation,” “Jane Eyre”
※ 父親が日系アメリカ人三世


カリン・クサマ(監督分科会)
Karyn Kusama – “Jennifer’s Body,” “Girlfight”
※ 父親が日本人


スペンサー・ナカサコ(ドキュメンタリー分科会)
Spencer Nakasako – “Refugee,” “A.K.A. Don Bonus”


エミコ・オーモリ(ドキュメンタリー分科会)
Emiko Omori – “Rabbit in the Moon,” “Regret to Inform”
※ 日系2世


トロイ・タカキ(編集分科会)
Troy Takaki – “Baggage Claim,” “The Bounty Hunter”


マーク・ヨシカワ(編集分科会)
Mark Yoshikawa – “The Hunger Games: Mockingjay (Parts 1 and 2),” “The Tree of Life”


ケント・セキ(短編および長編アニメーション分科会)
Kent Seki – “Rocky and Bullwinkle,” “Megamind”



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産経ニュース  2016年6月30日付け記事
日本人一気に13人 人種比率の是正が背景に ノミネート歴なくても会員( ttp://www.sankei.com/entertainments/news/160630/ent1606300009-n1.html )

※ 記事の内容からすれば、これは「(今回、日本人で招聘された映画人は)ノミネート歴なくても会員(として招聘)」という意味でしょうね。でも、日本人以外ではノミネート歴が無くてもアカデミー会員になっている人は山ほどいるので、問題無しでしょう。(それなのに、敢えてこういうヘッドラインにする産経新聞。)

今回選ばれた北野武、是枝裕和、黒沢清、河瀬直美各監督はカンヌやベネチアなど世界的映画祭での実績があるが、アカデミー賞の候補になったことはない。映画評論家の渡辺祥子さんは「これまでの日本人会員数は明確ではないですが、従来は衣装デザイナーのワダ・エミさんや俳優の渡辺謙さんなど、受賞者や候補になった方が会員になるのが主なパターンでした」と言う。






シネマトゥデイ  2016年6月30日付け記事
北野武が米アカデミー会員候補に!日本人10人強が新規招待( ttp://www.cinematoday.jp/page/N0084167 )

The Hollywood Reporter によると、現在のアカデミー会員の割合は92%が白人、75%が男性だが、今回のリストに挙がった全員が会員になった場合、その比率は白人が89%に、男性が73%に減少するという。だが、招待されたからといって全員がアカデミー会員になるわけではない。賞の選考には対象作品の鑑賞などで多くの時間を割かれるため負担も大きい。実際、以前同会員の候補になった高畑勲監督と宮崎駿監督は、二人とも辞退している。


えー、断っちゃったのか。宮崎駿監督は長編アニメ映画作りからは引退したし2014年度に招聘されたときには受けたのかと思っていた。米国アカデミー賞からアカデミー名誉賞を貰っているのに、アカデミー会員招聘は受諾しないのか。なんとまあ。宮崎駿監督は2014年度以前にも招聘されているので、結局、「何回招聘されても嫌なもんは嫌」ってことなのね。




産経ニュース  2016年6月30日付け記事
【仲代、北野両氏らアカデミー会員】「先達のおかげ」と仲代達矢さん( ttp://www.sankei.com/entertainments/news/160630/ent1606300010-n1.html )

俳優、仲代達矢さんの話「会員に選ばれたことはたいへん光栄だ。米国の映画祭に毎年招かれ、日本映画の評価はすごいと実感していた。黒沢明さんや小林正樹さんら先達たちが、日本映画を世界のレベルに上げてくれた。私が選ばれたというより、かつての日本映画のスタッフを認めてくれたとも言え、ありがたい思いだ」


演技そのものやキャリアに対する評価はもちろん、アメリカの映画祭等からの招待を断ったりせず映画産業に国際的視野を持って協力する姿勢を評価され今回の招聘に至ったのではないでしょうか。確かに「かつての日本映画のスタッフを認めてくれた」とも言えますが、今回の招聘の理由は ”今なお一線で活躍し、世界の映画業界に対し国際的貢献度も高い” という仲代さん自身への高評価が一番ではないでしょうか。こういうコメントを出していらっしゃるということは仲代達矢さんは招待を受諾されるということでしょうかね。


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683名のうち監督部門だけ見ても、ヨーロッパ三大映画祭で常連のような映画人が多く招待されています。このままこういう方向性でもってアカデミー会員が招聘されていくようなら、ますます”通(つう)好み”の映画がノミネートされる傾向が強まる!?




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