2012年度(第85回)アカデミー賞外国語映画賞|最終選考に進む9作品(外国語映画賞 ショートリスト) 発表|日本代表作『かぞくのくに』は落選

映画芸術科学アカデミーは2012年度(第85回)アカデミー賞外国語映画賞の最終選考に進む9作品(アカデミー賞外国語映画賞 ショートリスト)を発表しました。この9作品は、エントリーされた71作品(1ヶ国につき1作品の出品)の中から選ばれました。


この9作品の中から最終的なノミネート作品5作品が選ばれます。



● 映画芸術科学アカデミー 公式サイトのプレスリリース (2012年12月21日付け)
9 Foreign Language Films Vie For Oscar[レジスタードトレードマーク]



アカデミー賞外国語映画賞の最終選考に進む9作品のうち6作品は外国語映画賞部門を担当する委員会の会員による投票によって決まり、残りの3作品は外国語映画賞執行委員会(Foreign-Language Film Award Executive Committee)からの推薦で決まります。外国語映画賞執行委員会はロサンゼルスを活動拠点としているアカデミー会員20名から成り立っています。(The Wrap のSteve Pond 氏の記事による)



● 映画芸術科学アカデミー 公式サイト(トップページ)
 The Academy of Motion Picture Arts and Sciences

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2012年度(第85回)アカデミー賞外国語映画賞 最終選考に進む9作品

(出品国名のアルファベット順に)


愛、アムール
英題|Love
原題|Amour
監督|ミヒャエル・ハネケ Michael Haneke
出品国|オーストリア
北米配給|ソニー・ピクチャーズ・クラシックス




魔女と呼ばれた少女
英題|War Witch
原題|Rebelle
監督|キム・グエン Kim Nguyen
出品国|カナダ
北米配給|トライベッカ・フィルムズ




NO
英題|No
監督|パブロ・ラライン Pablo Larraín
出品国|チリ
北米配給|ソニー・ピクチャーズ・クラシックス




ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮
英題|A Royal Affair
原題|En kongelig affære
監督|ニコライ・アーセル Nikolai Arcel
出品国|デンマーク
北米配給|マグノリア・ピクチャーズ




最強のふたり
英題|Untouchable
原題|Intouchables
監督|エリック・トレダノ Eric Toledano
   オリヴィエ・ナカシュ Olivier Nakache
出品国|フランス
北米配給|ワインスタイン・カンパニー




ザ・ディープ
英題|The Deep
原題|Djupid
監督|バルタザール・コルマウクル Baltasar Kormakur
出品国|アイスランド
北米配給|フォーカス・フューチャーズ




コン・ティキ
英題|Kon-Tiki
監督|ヨアヒム・ローニング Joachim Roenning
   エスペン・サンドベリ  Espen Sandberg
出品国|ノルウェイ
北米配給|ワインスタイン・カンパニー




汚れなき祈り
英題|Beyond the Hills
原題|Dupa dealuri
監督|クリスティアン・ムンジウ Cristian Mungiu
出品国|ルーマニア
北米配給|サンダンス・セレクツ




シモンの空 
英題|Sister
原題|L'enfant d'en haut
監督|ウルスラ・メイヤー(ウルスラ・メイエ) Ursula Meier
出品国|スイス
北米配給|アドプト・フィルムズ


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最終選考に進む作品として有望視されていたけれど落選した、主な候補


東ベルリンから来た女
原題/英題|Barbara
監督|クリスティアン・ペツォールト Christian Petzold
出品国|ドイツ



さよなら、アドルフ
原題/英題|Lore
監督|ケイト・ショートランド Cate Shortland
出品国|豪州



塀の中のジュリアス・シーザー
英題|Caesar Must Die
原題|Cesare deve morire
監督|パオロ・タヴィアーニ Paolo Taviani
   ヴィットリオ・タヴィアーニ Vittorio Taviani
出品国|イタリア



父の秘密
英題|After Lucia
原題|Despues de Lucia
監督|マイケル・フランコ Michel Franco
出品国|メキシコ



フィル・ザ・ヴォイド
英題|Fill the Void
原題|Lemale Et Ha’Chalal
監督|ラマ・ブルシュタイン Rama Bursztyn
出品国|イスラエル



嘆きのピエタ
英題|Pieta
監督|キム・ギドク Kim Ki-duk
出品国|韓国



Our Children(英題)
別英題|Loving Without Reason
原題|À perdre la raison
監督|ヨアヒム・ラフォーズ Joachim Lafosse
出品国|ベルギー



Just the Wind(英題)
原題|Csak a szel
監督|バネデク・フリーガオフ(ベネデク・フリーガウフ/ベンス・フリーガウフ) Benedek Fliegauf
出品国|ハンガリー



Nairobi Half Life(英題)
監督|David 'Tosh' Gitonga
出品国|ケニア



In the Shadows(英題)
原題|Ve stínu
監督|ダビド・オンドリチェク(デヴィッド・オンドリチェク) David Ondricek
出品国|チェコ共和国



君がくれた翼
別邦題|しあわせのカラス(2012年東京国際映画祭での邦題)
英題|Kauwboy
監督|バウデワェイン・コーレ(バウデワイン・コーレ/バウデウェイン・コーレ) Boudewijn Koole
出品国|オランダ


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サプライズが全然無いラインナップになったのが逆にサプライズ。選ばれた作品はみなノミネート有望候補作として名が挙がっていたものばかり。アジア、アフリカは全滅。常連ドイツも落選。『東ベルリンから来た女』(Barbara)は入ってもおかしくなかったのにね。(私はリスト入りすると思っていた)

アジア地区から選ばれるとすれば、作品・監督の知名度からキム・ギドク監督『ピエタ』(韓国)か、映画賞では好調のイスラエル製作で大きな映画祭での受賞歴もある『Fill the Void』か、作品の知名度はないけれど異国情緒たっぷりでアクションシーンもある時代劇(この部門は案外こういうのが好き)『Myn Bala』(カザフスタン共和国)あたりか……と思っていましたが、どれも落選。

キム・ギドク監督作はアカデミー賞外国語映画賞向きではない(この部門を選んでいる人々の好みじゃない)から知名度があってもリスト入りは無理ではないか、クリスティアン・ムンジウ監督は2007年度に『4ヶ月、3週と2日』で最終選考に進む9作品の中にすら入れず落選したことでかなりのブーイングが起きたので今回は(最低でも)最終選考に進む9作品の中には入れてくるだろうと予想していましたが、その通りになりました。

今年はこのショートリストの発表が早いですね。例年ノミネーション発表の一週間前~10日前あたりに公表されるのに。これは推測ですがこうしてノミネート候補作をはっきりさせておき、年末年始の休暇中にアカデミー会員にこれらの作品をみてもらおうということではないでしょうかね。特に、『愛、アムール』は外国語映画賞部門だけでなく作品賞へ、『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』は美術賞・衣装デザイン賞へのノミネートを狙っていますので、そちらの部門へのアピールのためにもより多くの会員に見てもらいたいんじゃないでしょうか。

【参考】 Thompson on Hollywood
Oscar Foreign Language Shortlist Films All Open or Set for Release by Early 2013

やっぱり「あれっ、今年は例年と比べちょっと違うな」って感じがありますよね。このショートリストに載った9作品すべて、北米で公開済みもしくは2013年上半期前半に公開予定がある作品だそうです。少なくともニューヨークとロサンゼルスでアカデミー賞授賞式前までにはリリースされるはずでこういうことは大変珍しい、とのこと。2008年度、2009年度、2010年度の同部門受賞作は授賞式が終わってから劇場公開され、それ以前には北米ではリリースされていなかったそうです。(確かに、2008年度の『おくりびと』も授賞式の直前になってFYC広告が登場し出した記憶があります。)

つまり、この9作品は映画の出来が良く外国語映画はなかなか成功しないアメリカ国内で多少なりとも興行的に成り立つ可能性があるからこそ劇場公開が決まっている(もしくは劇場公開が行われていた)ということでしょうが、アカデミー賞ノミネートもしくは最終選考に残った作品としてそれを売り文句にして観客の耳目を集めたいという配給会社の思惑と力が選考結果に反映されてしまったのではないか?という疑念もなきにしもあらず、ってことでしょうかね。でもまぁ、北米では外国語映画を見る観客は本当に少ないらしいので宣伝文句として有効なら活用すればいいし(日本でも他の国でも"アカデミー賞ノミネート"の文句を使うしね。効果がうんとあるかどうかは分からんけど、多少はあるでしょ。)、選ばれた9作品は元々有望作品として名が挙がっていて選ばれても不思議はないものばかりなので大きな問題にはならないでしょう。でもこの部門は選考過程が特殊なのでずっと問題を抱えているのは確か。なのに大幅に改善されないのは、一般観客も含め「アメリカ国内で外国語映画への関心度が極めて低いから」でしょう。 日本でも洋画の興行が落ちてきているそうなので「自国作にしか・母国語作品にしか興味がない」というアメリカのようになってきているということよね。

【参考】 The Wrap 内 Steve Pond
Oscar's Foreign-Language Shortlist Travels to Austria, France, Denmark, Iceland

スティーヴ・ポンド氏によると、クリスティアン・ムンジウ監督作『汚れなき祈り』(英題:Beyond the Hills)は同部門執行委員会からの推薦で、『最強のふたり』『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』『The Deep』『Kon-Tiki』は同部門を担当する委員会の会員(執行委員とかではない一般会員)のチョイスによるもので、『愛、アムール』『Sister』『War Witch』『NO』は一般会員と執行委員会双方からの支持によるものではないか、とのこと。 やっぱり、クリスティアン・ムンジウ監督作は前回のことがあるのでなんとしても落とすわけにはいかなかった、ということよね。 そりゃなにもヨーロッパの映画祭と同じ傾向にする必要はないとは思いますが、2007年度の同部門受賞作のことを考えるにあれが受賞して『4ヶ月、3週と2日』や『シークレット・サンシャイン』が最終選考に進む9作品の中へも入らず落っこちるのは腑に落ちない感じがするのも確かですね。ま、どれが選ばれてもアカデミー賞はアカデミー会員が自分たちの好みで選ぶものだからそれはそれでいいのですけど、この部門は少人数で内々で決めちゃっているからそこがねえ……。他の映画祭だって限られた少人数で決めているんだからそういうもんだと言えばそれまでなんだけどねえ。アカデミー賞の大きな個性・特徴は6,000名弱というそれなりの大人数で結果を出している点なんだから、この部門に関してはそうなっていないというのはどうなのか?という気もするのですよ。

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【追記】

2012年度(第85回)アカデミー賞外国語映画賞の結果は以下のとおり。★ …… 受賞

愛、アムール
 英題|Love
 原題|Amour
 監督|ミヒャエル・ハネケ Michael Haneke
 出品国|オーストリア



魔女と呼ばれた少女
英題|War Witch
原題|Rebelle
監督|キム・グエン Kim Nguyen
出品国|カナダ



NO
英題|No
監督|パブロ・ラライン Pablo Larraín
出品国|チリ



ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮
英題|A Royal Affair
原題|En kongelig affære
監督|ニコライ・アーセル Nikolai Arcel
出品国|デンマーク



コン・ティキ
英題|Kon-Tiki
監督|ヨアヒム・ローニング Joachim Roenning
   エスペン・サンドベリ  Espen Sandberg
出品国|ノルウェイ




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