日本代表作『舟を編む』は落選|2013年度(第86回)アカデミー賞外国語映画賞|最終選考に進む9作品(外国語映画賞 ショートリスト)

外れる、って何?「外れる」じゃ自ら下りたみたいなイメージですよね。「落選」ですよ、落選。


シネマトゥデイ 2013年12月21日付け記事
アカデミー賞外国語映画賞の候補作が発表 日本代表『舟を編む』は外れる

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【日本代表作『舟を編む』選出に関する記事】

dot.(ドット)|朝日新聞出版 2013年10月24日付け更新 
(※週刊朝日  2013年11月1日号)
「そして父になる」がアカデミー賞候補になれない意外な理由

この中で語られている映画ライターの紀平照幸氏の主張はどうなのか。ちゃんと理解されていると思いますけどね。むしろ(バラエティ誌の記事Could the Oscars’ Foreign Language Award Use an Overhaul?でも書かれているとおり)『そして父になる』のほうが選ばれやすいと言われているのに。


国内選考も(他国ではやっている)アカデミー賞外国語映画賞の″傾向と対策″を考慮していないそうで。この部門へ出品するということは各国代表作とのコンペティション(競争)をするということ。それなのに、世界の潮流を考えていない/他国からはどんな作風のものが出品されてくるかその状況を掴んでいないと胸を張っているという滑稽さ。競争相手のことを分かっていなければ戦えないでしょ。


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Yahoo! ニュース 個人  2013年9月7日付け
意外に知られていない「アカデミー外国語映画賞」の選ばれ方
この部門では受賞を目指す各国の思惑が入り乱れます。それぞれの国の特色を出しつつ、アメリカ人にも受け入れられる普遍的なテーマを持った作品を選ぶ必要があるわけです。それが見事に功を奏したのが『おくりびと』だったわけですね。日本でヒットしたからとか、ヨーロッパの映画祭で認められたからというだけでは決定的な長所にはならないのです(歴史的に見てもカンヌ映画祭とアカデミー賞の受賞傾向はまるで違います)。


『おくりびと』が受賞した2008年度以降は同部門の傾向は微妙に変化し、下↓のバラエティ誌の記事でも書かれているとおり2010年度の『籠の中の乙女』(2009年カンヌ国際映画祭ある視点部門受賞作)のような演出の作品をも選ぶようになっています。今年度の「最終選考に残った9作品」のリストをみても判る通り、紀平氏が言うような認識はもう古くなっていると言えるでしょう。それに、前々からアカデミー賞外国語映画賞部門はベルリン国際映画祭との相性がいい(=ベルリンでの受賞作/出品作がノミネートされることが多々ある)と言われていますので、「ヨーロッパの映画祭で認められたからというだけでは…」云々というのも正確ではないでしょう。


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バラエティ誌 variety.com  2013年09月23日付け記事  筆者:Cameron Bailey
Could the Oscars’ Foreign Language Award Use an Overhaul?
(「アカデミー賞外国語映画賞部門はオーバーホール可能か?」)

この記事の中で、アメリカの映画ジャーナリスト、アン・トンプソンの言葉として以下のように載っています。
(訳):エンタメ業界に影響力のあるジャーナリスト、アン・トンプソンは最近こう書いている―「出品国個々に代表作を選出させる事の問題点のひとつは、選考において不正が行われていないと仮定するとしてその選択はしばしば近視眼的で、アカデミー賞を他国の映画と競争し合うのに最もふさわしい作品を彼らが選択するというわけではないということだ

「もしかして不正が行われたのでは?と勘ぐってしまうほど不可解な選択をした国がある」そして「アカデミー賞は他作品とのコンペ(競争)だということも忘れてしまっているかのように代表作を決めてくる国も今だにある」という趣旨の指摘ですね。


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アメリカの有名エンタメ業界誌での指摘を受けたからなのかどうかは分かりませんが、その後日本国内でこんな記事が出ました。


日経エンタテインメント!   2013年12月16日付け記事
米アカデミー賞 日本代表はなぜ「舟を編む」なのか
※今年の選考委員は7人。映画評論家の品田雄吉氏、脚本家の石森史郎氏、映画祭ディレクターの大竹洋子氏、映画プロデューサーの角谷優氏、映画ジャーナリストの野島孝一氏、撮影監督の高間賢治氏、映画監督の平山秀幸氏が名を連ねる。

「昔は映画評論家ばかりだったが、今は監督や脚本家などメンバーは職種別で、各自がプロの視点で映画を見て、自由闊達(かったつ)に意見を出している」とは、代表を務める映画評論家の品田雄吉氏。「映連は大手映画会社が中心に構成されているが、作品や配給会社の大小、ましてや“お願い”などありえない。それは昨年、ヤン・ヨンヒ監督が自身の体験を基に描いたスターサンズ配給『かぞくのくに』が選ばれたことでも明らか」(同氏)。

はっきり言って昨年度(=2012年度)は国際的コンペで戦って善戦できそうな日本映画が無かったからね。(「お願い」されるまでもなく)『舟を編む』を選んじゃったってことだと、それはそれで別の問題も発生するような……。



今回の「舟を編む」は、この「おくりびと」に類似点が多いという。 「『おくりびと』は、お弔(とむら)いの方法(納棺)が日本独自の文化だったのがよかったのだと思う。一方で、お葬式やエンバーミング(遺体保存)はどの国にもあり、共感ポイントもある。この両面を持ち合わせていたから、アカデミーを獲れたのではないか。『舟を編む』も同様のことが言える。辞書の編さんは万国共通の職業だが、日本というのは特別。字引が世界の入り口となり、日本語で独自の世界が見せられるという作品のあり方が、『おくりびと』に近い」(品田氏) 今回の選考委員の7人中6人が、「おくりびと」のときのメンバー。11年には「告白」がノミネート手前の9本に残るなど、好成績が続いている。 「議論を詰めた後での投票で、全員の合意で決まるわけではない。世間でも、賛否両論があって当然だと思う。ただ、選ばれるのは1本だけ。打算も政治もなく、アカデミーに見せたいと思える日本の作品を選んできたが、近年結果にもつながっている」(同氏)


えっ、好成績が続いている??? 好成績が続いていると言えるのはドイツのような国のことを言うんじゃないでしょうか。「好成績が続いている」「近年結果にもつながっている」……こういうのを手前味噌と言う。 

品田氏の発言、dot.(ドット)の記事(2013/10/24付け)で語ったこととニュアンス変わっています。dot.(ドット)では「長年選考にかかわっていますが、どんな作品ならアメリカでウケて賞が取れるか、という意見は出たことがない」って言っているのに、ここでは「(今回の代表作は『おくりびと』と似ている」などと”傾向と対策”は考えて選んでいるみたいな発言。

「辞書の編さんは万国共通の職業だが、日本というのは特別」ってどのへんが特別なんでしょう?その日本語の文字が外人にはスペシャルに見える?日本語の辞書編纂方法が特別に見える?これといって特別だとは思わないけど。

とにかく、他の国から今、どういう作品が出品されてきているか / その作風の傾向や変化を選考委員は全然チェックしていない、ということははっきり分かります。傾向は刻々と変わっているのに。いまだに『おくりびと』が基準。『おくりびと』なんてもう5年も前のことです。

プロの視点で選ぶのは構わないけれど、各選考委員の持っている選考基準は毎年毎年更新してくださいよ。あなたがたの「見せたい日本映画」と「アカデミー賞を他国の映画と競争し合うのに最もふさわしい作品」はちょっと違うということです。アカデミー賞外国語映画賞はコンペ(競争)なんだから。単に「私たちが見せたい日本映画」をご披露して終り、という場所じゃない。


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最終選考に残った9作品は以下のとおり。

アカデミー賞外国語映画賞部門は各国を代表して出品されてくる作品たちとのコンペ(=競争)である、という認識で選出して欲しい。出品される側(=アメリカの映画芸術科学アカデミー&アメリカ映画業界)も、アカデミー賞外国語映画賞部門は各国代表作の中での競い合いであると考えているのだから。「私たちがアカデミーにお見せしたい日本映画」をご披露したところでどうにもならん。日本代表作を出品するのであれば、どこの国でもやっている ”傾向と対策” は行ってくださいませ。



2013年度アカデミー賞外国語映画賞最終選考に進む9作品
(出品国名のアルファベット順に)

本年度、同部門へ出品されたのは76作品。(出品は、各国、1作品のみ) その中からこの9作品が選ばれました。そして、最終的なノミネート作品5作品はこの9作品の中から選ばれます。


オーバー・ザ・ブルー・スカイ
英題:The Broken Circle Breakdown 
監督 フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン Felix van Groeningen
(ベルギー)

・2013年ベルリン国際映画祭 パノラマ部門へエントリー。
     2賞を受賞。
・2013年トライベッカ映画祭 ワールド・ナラティブ部門へエントリー。
     女優賞と脚本賞を受賞。
・2013年ヨーロッパ映画賞 作品賞をはじめ7部門にノミネート。
     女優賞を受賞。




鉄くず拾いの物語
英題:An Episode in the Life of an Iron Picker  
原題:Epizoda u zivotu beraca zeljeza
監督 ダニス・タノヴィッチ Danis Tanovic
(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)

・2013年ベルリン国際映画祭 メイン・コンペティションへエントリー。
    銀熊賞(審査員特別賞)、銀熊賞(男優賞)を含む3賞受賞。
・2013年エルサレム国際映画祭 In the Spirit of Freedom 部門 作品賞受賞。




消えた画 クメール・ルージュの真実
英題:The Missing Picture
原題:l'image manquante
監督 リティー・パニュ Rithy Panh
(カンボジア)

・2013年カンヌ国際映画祭 ある視点部門 受賞。
・2013年ヨーロッパ映画賞 ドキュメンタリー映画賞にノミネート。
・2013年エルサレム国際映画祭 In the Spirit of Freedom 部門
     ドキュメンタリー映画賞受賞。




偽りなき者
英題:The Hunt  
原題:Jagten
監督 トマス・ヴィンターベア Thomas Vinterberg
(デンマーク)

・2012年カンヌ国際映画祭 メイン・コンペティションへエントリー。 
     男優賞はじめ3賞を受賞。
・2012年ヨーロッパ映画賞 作品賞をはじめ5部門にノミネート。
     脚本賞受賞。
・2012年英国アカデミー賞
     外国語映画賞ノミネート。
・2012年英国インディペンデント映画賞
     国際インディペンデント映画賞受賞。
・2013年米国インディペンデント・スピリット賞
     外国映画賞ノミネート。
・2013年ゴールデン・グローブ賞
     外国語映画賞ノミネート。




ふたつの人生(←2013年大阪ヨーロッパ映画祭時の邦題)
英題:Two Lives
原題:Zwei Leben
監督 ゲオルグ・マース Georg Maas
(ドイツ)

・2012年ビーバーラッハ映画祭 作品賞受賞。




グランド・マスター
英題:The Grandmasters  
原題:一代宗師
監督 ウォン・カーウァイ Wong Kar-wai
(香港)

・2013年アジア太平洋映画祭 9部門ノミネート。
     主演女優賞をはじめ2賞を受賞。
・2013年台湾金馬奨 12部門ノミネート。
     主演女優賞をはじめ6賞を受賞。  
・2013年金鶏百花映画祭 4部門ノミネート
     助演女優賞はじめ2賞を受賞。




悪童日記
英題:The Notebook 
フランス題:Le Grand Cahier
ハンガリー題:A nagy Fuzet  
監督 ヤーノシュ・サース Janos Szasz(Janos Szasz)
(ハンガリー)

・2013年カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭
     グランプリ(=クリスタル・グローブ賞=最高賞)受賞。



グレート・ビューティー 追憶のローマ
英題:The Great Beauty
原題:La grande bellezza
監督 パオロ・ソレンティーノ Paolo Sorrentino
(イタリア)

・2013年カンヌ国際映画祭 メイン・コンペティションへエントリー。
・2013年ヨーロッパ映画賞 作品賞をはじめ5部門にノミネート。
     作品賞をはじめ4賞を受賞。
・2013年英国インディペンデント映画賞
     国際インディペンデント映画賞ノミネート。
・2013年米国インディペンデント・スピリット賞
     外国映画賞ノミネート。
・2013年ゴールデン・グローブ賞
     外国語映画賞ノミネート。



オマール、最後の選択
原題:Omar
監督 ハニ・アブ・アサド Hany Abu-Assad
(パレスチナ)

・2013年カンヌ国際映画祭 ある視点部門へエントリー。
     ある視点部門 審査員賞を受賞。
・2013年ドバイ国際映画祭 ムア・アラブ長編映画部門へエントリー。
     作品賞と監督賞を受賞。

以上

● 映画芸術科学アカデミー 公式サイトのプレスリリース (2013年12月19日付け)
  9 Foreign Language Films Advance in Oscar[レジスタードトレードマーク] Race




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2013年度(第86回)アカデミー賞外国語映画賞|最終選考に進む9作品(外国語映画賞 ショートリスト) 発表|日本代表作『舟を編む』は落選

映画芸術科学アカデミーは2013年度(第86回)アカデミー賞外国語映画賞の最終選考に進む9作品を発表しました。この9作品は、エントリーされた76作品(1ヶ国につき1作品の出品)の中から選ばれました。


この9作品の中から、最終的なノミネート作品5作品が選ばれます。



● 映画芸術科学アカデミー 公式サイトのプレスリリース (2013年12月19日付け)
  9 Foreign Language Films Advance in Oscar[レジスタードトレードマーク] Race



アカデミー賞外国語映画賞の最終選考に進む9作品のうち6作品は、外国語映画賞部門を担当する委員会の会員による投票によって決まり、残りの3作品は外国語映画賞執行委員会(Foreign-Language Film Award Executive Committee)からの推薦で決まります。外国語映画賞執行委員会はロサンゼルスを活動拠点としているアカデミー会員20名から成り立っています。 (The Wrap のSteve Pond 氏の記事による)

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2013年度アカデミー賞外国語映画賞最終選考に進む9作品

(出品国名のアルファベット順に)


オーバー・ザ・ブルー・スカイ
英題:The Broken Circle Breakdown 
監督 フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン Felix van Groeningen
(ベルギー)




鉄くず拾いの物語
英題:An Episode in the Life of an Iron Picker  
原題:Epizoda u zivotu beraca zeljeza
監督 ダニス・タノヴィッチ Danis Tanovic
(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)




消えた画 クメール・ルージュの真実
英題:The Missing Picture
原題:l'image manquante
監督 リティー・パニュ Rithy Panh
(カンボジア)




偽りなき者
英題:The Hunt  
原題:Jagten
監督 トマス・ヴィンターベア Thomas Vinterberg
(デンマーク)




ふたつの人生(2013年大阪ヨーロッパ映画祭時の邦題)
英題:Two Lives
原題:Zwei Leben
監督 ゲオルグ・マース Georg Maas
(ドイツ)




グランド・マスター
英題:The Grandmasters  
原題:一代宗師
監督 ウォン・カーウァイ Wong Kar-wai
(香港)




悪童日記
英題:The Notebook 
フランス題:Le Grand Cahier
ハンガリー題:A nagy Füzet  
監督 ヤーノシュ・サース János Szász(Janos Szasz)
(ハンガリー)




グレート・ビューティー 追憶のローマ
英題:The Great Beauty
原題:La grande bellezza
監督 パオロ・ソレンティーノ Paolo Sorrentino
(イタリア)




オマール、最後の選択
原題:Omar
監督 ハニ・アブ・アサド Hany Abu-Assad
(パレスチナ)




なお、The Wrap の Steve Pond 氏のこの記事によると、『グランド・マスター』『オーバー・ザ・ブルー・スカイ』『Two Lives』は一般委員からの推薦、『The Missing Picture』は執行委員の選択ではないか、とのこと。

また、12月03日付けの記事(Oscar’s Foreign Language Chair Promises Big Changes After This Year’s Awards)によると、今年度のアカデミー賞終了後には外国語映画賞部門の大幅な見直しがなされるだろうということです。


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最終選考に進む作品として有力視されていたけれど落選した、主な候補


ある過去の行方
英題:The Past  
仏題:Le Passe
監督 アスガー・ファルハディ Asghar Farhadi
(イラン)




グロリアの青春
原題:Gloria
監督 セバスティアン・レリオ Sebastian Lelio
(チリ)



少女は自転車にのって  
英題:Wadjda  
独題:Das Madchen Wadjda
監督 ハイファ・アル=マンスール Haifaa al-Mansour
(サウジアラビア)



The Rocket
監督 キム・モダン Kim Mordaunt
(豪州)



イロイロ ぬくもりの記憶
英題:Ilo Ilo
原題:爸媽不在家
監督 アンソニー・チェン Anthony Chen
(シンガポール)



Gabrielle
監督 ルイーズ・アルシャンボール Louise Archambault
(カナダ)



私の、息子
英題:Child's Pose
原題:Poziția copilului
監督 カリン・ピーター・ネッツァー C?lin Peter Netzer(Calin Peter Netzer)/
(ルーマニア)



エリ(2013東京国際映画祭での邦題)
原題:Heli
監督 アマト・エスカランテ Amat Escalante
(メキシコ)



未熟な犯罪者(2012年東京国際映画祭での邦題)
英題:Juvenile Offender  
原題:Beom-joe-so-nyeon
監督 カン・イグァン Yi-kwan Kang
(韓国)



Bethlehem
原題:Beit-Lehem
監督 ユバール・アドラー Yuval Adler
(イスラエル)



Neighboring Sounds(Neighbouring Sounds)
原題:O Som ao Redor
監督 クレベール・メンドンサ・ フィーリョ Kleber Mendonca Filho
(ブラジル)


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ノミネートが確実視されていた3作品、『ある過去の行方』『グロリアの青春』『少女は自転車にのって』がこの段階で落選するという大波乱。 リスト入りした作品とみると、例年になくアートハウス系作品が多いように思います。 『アデル、ブルーは熱い色』が出品されてこなかった影響か、『アデル、ブルーは熱い色』が無くても見劣りしないようなラインアップになるようにとアート系作品・メジャーな国際映画祭の受賞歴または出品歴のある作品が選ばれたという印象。

同部門のノミネート傾向は『おくりびと』が受賞した後から変化してきました。『おくりびと』が受賞した5年前とはもう違うのです。

今年のように『そして、父になる』『風立ちぬ』という国際的評価も高く知名度のある作品が日本国内に2つもある年などそう無いのにどちらも選出しなかった。他の国から、どういう作品が出品されてきているか/その作風の傾向や変化を全然チェックしていないであろう日本代表選考委員は最高のチャンスをみすみす潰したということです。今の日本は国際的な競争力のある作品を毎年出品できるわけではなく今年は”最大のチャンス年”だったので余計残念です。


ですから、こういう認識↓はいい加減改めたほうがいいでしょう。傾向は刻々と変わっているのに。『おくりびと』なんてもう5年も前のことです。 

日経エンタテインメント!   2013/12/16付け記事
米アカデミー賞 日本代表はなぜ「舟を編む」なのか

※今年の選考委員は7人。映画評論家の品田雄吉氏、脚本家の石森史郎氏、映画祭ディレクターの大竹洋子氏、映画プロデューサーの角谷優氏、映画ジャーナリストの野島孝一氏、撮影監督の高間賢治氏、映画監督の平山秀幸氏が名を連ねる。 応募作は、出品側の要望で非公開だが、今年は15本集まった。例年は25~30本というから、少なめだ。


「昔は映画評論家ばかりだったが、今は監督や脚本家などメンバーは職種別で、各自がプロの視点で映画を見て、自由闊達(かったつ)に意見を出している」とは、代表を務める映画評論家の品田雄吉氏。


今回の「舟を編む」は、この「おくりびと」に類似点が多いという。 「『おくりびと』は、お弔(とむら)いの方法(納棺)が日本独自の文化だったのがよかったのだと思う。一方で、お葬式やエンバーミング(遺体保存)はどの国にもあり、共感ポイントもある。この両面を持ち合わせていたから、アカデミーを獲れたのではないか。『舟を編む』も同様のことが言える。辞書の編さんは万国共通の職業だが、日本というのは特別。字引が世界の入り口となり、日本語で独自の世界が見せられるという作品のあり方が、『おくりびと』に近い」(品田氏) 今回の選考委員の7人中6人が、「おくりびと」のときのメンバー。11年には「告白」がノミネート手前の9本に残るなど、好成績が続いている。 「議論を詰めた後での投票で、全員の合意で決まるわけではない。世間でも、賛否両論があって当然だと思う。ただ、選ばれるのは1本だけ。打算も政治もなく、アカデミーに見せたいと思える日本の作品を選んできたが、近年結果にもつながっている」(同氏)


「好成績が続いている」「近年結果にもつながっている」なんて手前味噌なことを言っていますが、『おくりびと』以降2010年度に「最終選考に残った9作品」に入った(中島哲也監督作『 告白』)だけで全然続いてないではないですか。続いているというのはドイツみたいな国のことを言うんじゃないでしょうかね。 あなたがたの「見せたい日本映画」と「アカデミー賞を他国の映画と競争し合うのに最もふさわしい作品」はちょっと違うということです。アカデミー賞外国語映画賞はコンペ(競争)なんだから。単に「私たちが見せたい日本映画」をご披露して終り、という場所じゃない。




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