「フランスで年間興行収入第一位のコメディ映画『Qu’est-ce qu’on a fait au Bon Dieu?』(邦題『最高の花婿』)はフランス国外ではヒットしないだろう」というのは本当?

映画.com  2015年1月11日付け記事
【パリ発映画コラム】2014年興行総括、フランス映画が上位3を独占

実際2014年のベスト10の上位3を独占したのは、「マレフィセント」でも「アメイジング・スパイダーマン2」でもなく、なんとフランス映画だ。 <中略> ではベスト3は何かといえば、3位がリュック・ベッソンの「LUCY ルーシー」(520万1019人)、2位がダニー・ブーン、カド・メラドというフランスで人気のコメディアンが共演したどたばたコメディ「Supercondriaque」(526万8599人)、そしてダントツの1位がこれもコメディの「Qu’est-ce qu’on a fait au Bon Dieu?」(約1223万7274人)。 <中略> こちらはカトリック教徒のブルジョワ夫妻の娘4人がそれぞれ、アラブ人、ユダヤ人、中国人、黒人と、すべて宗教の異なる相手と結婚することから持ち上がる騒動を、あえて偏見や先入観に満ちたセリフで風刺の効いたパロディに仕立てたもの。フランスの生活事情をよく知っている者が観ればたしかに笑えるところが多々あるものの、そうではなく、カトリックとも縁がなければあまりピンとこない。しかも映像的にはテレビ映画で十分というクオリティなだけに、国外でのヒットは難しいだろう。 <中略> 興行成績だけではなく、観客の満足度という点でリストを比較してみると、もう少し内情がよくわかる。フランス語の映画サイトの最大手であるallocine (http://www.allocine.fr/) に、観客投票による2014年のベスト10が載っていたのでご紹介しよう。それによると、5位に輝いたビム・ベンダースが写真家セバスチャン・サルガドを描いた合作ドキュメンタリー(サルガドの息子と共同監督)を除くと、フランス映画は1本も入っていない。 <中略> フランスの観客にとっても、フランス映画はクオリティ的にいまいちだったということになるわけで、興収がよかったからと手放しで喜んでばかりもいられない状態なのだ。 <中略> ともあれ、2015年は興行成績と中身が比例するような良作をもっと期待したい。
(筆:佐藤久理子)


『Qu'est-ce qu'on a fait au Bon Dieu?』(フランス映画祭2015での邦題|『ヴェルヌイユ家の結婚狂騒曲』 /劇場公開時の邦題『最高の花婿』)はフランス国外でもヒットしている模様。ドイツの2014年度年間興行収入第2位。オーストリアの2014年度年間興行収入第2位。ベルギーの2014年度年間興行収入第7位。ギリシャの2014年度年間興行収入第9位。なお、『Qu'est-ce qu'on a fait au Bon Dieu?』はIMDb のレイティングでは 7.0(10.0 が満点/投票|8,746票)(2015年1月11日現在)


ヨーロッパ各国の興行数字を確認しないで書いたのでしょうか。

「事情を知っていないと海外コメディは楽しめない」「映像的なクオリティが不十分なものはヒットしない」というのは偏見ではないでしょうかね。異国の国内事情に詳しくないまま見て、その映画から異国の事情を知り楽しむということはしょっちゅう有るし。”初めて知る”ということの楽しみ、って有るでしょ。(映画を買い付ける側にも「事情を知っていないと海外コメディは楽しめない」という勝手な思い込みがあって ”日本に輸入されてこない” ”DVDスルーになる” ってことが頻繁に起こるんだろうね。) それに、映像的クオリティは低くてもそんなことお構いなしにヒットするということはフランス以外でも起こっているじゃないですか。

一般記事としてではなくこの書き手が映画.com内で持っているコラムとして書かれたものなので個人的意見が色濃く出た記事になっているのでしょうかねえ。(フランス最大手の映画サイトの観客投票による2014年ベストテンとフランス年間興行ランキングのベストテンが激しく食い違っていて、フランス映画が評価の上位に入っていなかった、と言われても……。日本だって年間興行ランキングのベストテンとキネマ旬報読者投票のベストテンは一致しないし、まぁ普通、そんなもんでしょう。)



「なぜフランス国産映画が上位を占めたのか?」「なぜ(他ジャンルではなく)コメディ映画がヒットしているのか?」というフランス国内事情や国民の感情を探ったレポートが読みたいです。

フランス年間興行収入トップ20に入った8本のうち、国産コメディ映画は6本、コメディ色もあるドラマ映画『サンバ』も入れれば7本もコメディが入っています。国産コメディがヒットするというのはその国に住む人たちの多くが気分の晴れない状態になっているということが多いと思うし、国民が持っている鬱々とした感情は先日起きた恐ろしい銃撃事件にも何かしら通じるものがあるのではないかと思うのですが。地元フランスに住んでいるからこそ肌で感じる国民感情やフランスお国事情に基づく考察をお願いしたいです。


大ヒットしたコメディ映画やそれを見に行ったフランス一般観客を間接的に腐すより、むしろ ”筆者が考える良作フランス映画” をなぜフランス一般観客が見に行かないのかを考察していただきたいです。また、「フランス製の映画にはフランス政府からそれなりに手厚い補助金が出ているが補助を受けて製作した映画が少しもヒットしない(=一般観客に届かない / 一般観客から高評価されない)ので見直しをするべきではないか。フランス映画に出されている補助金の額を減らすかもしくは打ち切ったらどうか」という話があると聞きましたが、補助金を手厚く出してまでフランス製映画を保護しようと懸命なのに自国民がそういう映画に反応しないのは何故なのかをレポートしていただきたいです。それも「一般観客はセンスが悪い」「一般観客は知識と教養が無い」とかそういう形での結論付けに終わらないレポートを。


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フランスの2014年年間(※)興行収入トップ20(Box Office Mojoによる)
France and Algeria, Monaco, Morocco and Tunisia Yearly Box Office
※ ただしBox Office Mojoによる米国以外の国の興行収入集計は2014年11月半ばでストップしており、興行収入の数字や順位は必ずしも正確とは言えません。また、このランキングの表題は「フランス、アルジェリア、モナコ、モロッコ、チュニジアの年間興行収入」となっており、フランス単体の集計ではないようです。


1.
Qu'est-ce qu'on a fait au Bon Dieu?
(劇場公開時の邦題|『最高の花婿』)
(フランス映画祭2015での邦題|『ヴェルヌイユ家の結婚狂騒曲』)

英題:Serial (Bad) Weddings
製作国:フランス
※ コメディ映画。 IMDb のレイティングでは 7.0(投票|8,746票)(2015年1月11日現在)

Qu'est-ce qu'on a fait au Bon Dieu? - Bande Annonce (tariler)







2.
Supercondriaque
製作国:フランス
※ コメディ映画。

Supercondriaque - Trailer







3.
LUCY/ルーシー
英題/原題:Lucy
製作国:フランス
※ アクション/サスペンス/SF

映画『LUCY/ルーシー』 インターナショナル・トレーラー
(YouTube シネマトゥデイ・チャンネルより)







4.
猿の惑星:新世紀(ライジング) 
英題:Dawn of the Planet of the Apes
製作国:アメリカ



5.
X-MEN:フューチャー&パスト
英題|X-Men: Days of Future Past
製作国:アメリカ



6.
ヒックとドラゴン2
英題:How to Train Your Dragon 2
製作国:アメリカ



7.
ブルー2 トロピカル・アドベンチャー
英題:Rio 2
製作国:アメリカ



8.
メイズ・ランナー
英題:The Maze Runner
製作国:アメリカ / カナダ / イギリス



9.
アメイジング・スパイダーマン2
英題:The Amazing Spider-Man 2
製作国:アメリカ



10.
サンバ
英題/原題:Samba
製作国:フランス
※ ドラマ/コメディ。

映画『サンバ』 日本版予告編
(YouTube シネマトゥデイ・チャンネルより)







11.
トランスフォーマー/ロストエイジ
英題|Transformers: Age of Extinction
製作国:アメリカ



12.
Les vacances du petit Nicolas
英題:Nicholas on Holiday
製作国:フランス
※ コメディ映画。

Les Vacances du Petit Nicolas - Bande-annonce (Trailer)








13.
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー
英題:Guardians of the Galaxy
製作国:アメリカ


14.
Les trois frères, le retour
製作国:フランス
※ コメディ映画。

Les trois frères, le retour - Bande Annonce (Trailer)







15.
Babysitting
製作国:フランス
※ コメディ映画。

Babysitting (2014) - Bande Annonce (Trailer)







16.
マレフィセント
英題:Maleficent
製作国:アメリカ



17.
キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー
英題|Captain America: The Winter Soldier
製作国:アメリカ



18.
ミュータント・タートルズ
英題:Teenage Mutant Ninja Turtles (2014)
製作国:アメリカ



19.
Fiston
製作国:フランス
※ コメディ映画。

Fiston (2014) - Bande Annonce





Box Office Mojo の各国 Yearly Box Office はお国柄が出ていて、面白い。ちなみに、エジプトの年間興行収入第一位は『GODZILLA(ゴジラ)』。 トップ10がアメリカ映画で占められてその国で製作された映画が一本も入っていない国もある。各国の興収上位に入った国産映画(=その国で作られた映画)の予告編なんか見てみるのも楽しい。大抵、YouTube にあるし、今は便利だね。(私は、この年末年始、ちょっとした隙間時間にそんなことをして遊んでいた。個人的にはイギリスの『The Inbetweeners 2』というボンクラ若者4人組のコメディが気になりました。)



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